坂東眞砂子死去のニュース。55歳ですか。まだ若かったんだ。
どこかのメディアで「ホラー小説ブームのさきがけ」と書かれてました。この表現にはちょっと違和感が残ります。そりゃホラーといえばホラーですが、どっちかというとドロドロした田舎の閉塞感、伝奇・土俗感。あるいは底無し沼のような女の業、そういう湿りっ気のほうが本筋だったような気がします。
この人の書いたものは目にとまればたいてい読んでます。いちばん最初は「山妣」だったかな。衝撃的でしたね。舞台は雪深い越後の山奥の因果もの。なるほどこれで直木賞受賞ですか。
中でも「桃色浄土」も傑作の部類と思います。こっちはあくまで空の青い土佐の小さな漁村が舞台で、ひたすら魚臭さが濃厚に漂い、潮の響きが読み終えた後も耳に残る。
あんまり評価は高くないんでしょうが、好きだったのは「善魂宿」。短編集というかオムニバス形式。舞台設定は白川郷あたりかな。また最近では「朱鳥の陵」。うののささら(持統天皇)のお話ですが、漢語を可能な限り使わない描写で、自然に醸しだされる古代ムードがなんともいえない。こりゃきっと続編が書かれるはずと思って、楽しみにしてたんですが。
楽しみにしている作家の新刊はなかなか出ない。マーフィの法則にもありそうなパターンです。
たとえばジョージ R. R. マーチンの氷と炎の歌シリーズ。マーチンはまだ65歳で年齢的には大丈夫なはずなんだけど、なんせ体重は150kg(想像)。とうてい長生きするとは思えない。 節制しろ! 遊んでないで早く続編書け!
もうひとつ。岳宏一郎の新刊がいつになっても出ない。著者はえーと、いま75歳くらいか。すごい好きな作家なんだけど、なんせ世に出たのが遅かったからなあ。デビュー作の「群雲、関ヶ原へ」が56歳。おまけに資料の読みこみがハンパない人らしく、一作書くのにえらい時間がかかる。寡作。
「群雲、大坂城へ(仮題)」、待ちわびてます。