どこかのメディアで「ホラー小説ブームのさきがけ」と書かれてました。この表現にはちょっと違和感が残ります。そりゃホラーといえばホラーですが、どっちかというとドロドロした田舎の閉塞感、伝奇・土俗感。あるいは底無し沼のような女の業、そういう湿りっ気のほうが本筋だったような気がします。

中でも「桃色浄土」も傑作の部類と思います。こっちはあくまで空の青い土佐の小さな漁村が舞台で、ひたすら魚臭さが濃厚に漂い、潮の響きが読み終えた後も耳に残る。
あんまり評価は高くないんでしょうが、好きだったのは「善魂宿」。短編集というかオムニバス形式。舞台設定は白川郷あたりかな。また最近では「朱鳥の陵」。うののささら(持統天皇)のお話ですが、漢語を可能な限り使わない描写で、自然に醸しだされる古代ムードがなんともいえない。こりゃきっと続編が書かれるはずと思って、楽しみにしてたんですが。
楽しみにしている作家の新刊はなかなか出ない。マーフィの法則にもありそうなパターンです。
たとえばジョージ R. R. マーチンの氷と炎の歌シリーズ。マーチンはまだ65歳で年齢的には大丈夫なはずなんだけど、なんせ体重は150kg(想像)。とうてい長生きするとは思えない。 節制しろ! 遊んでないで早く続編書け!

「群雲、大坂城へ(仮題)」、待ちわびてます。