★★ 連合出版
久しぶりに高島俊男本。
慣用音ってのは呉音でも漢音でも唐音でもない読みのことだそうです。へぇー。
要するに、間違い。誤解。根付いてしまった習慣ですか。代表的なものでは「消耗」とか。これは「ショウコウ」と読むのが正しいらしい。いつの頃からか右側のツクリの音にひかれてしまって「モウ」と読むのが定着した。誤読なんですが、でも、今更そんなこと言ったってしかたない。
名前だけは知ってる江戸時代の太宰春台センセなんかも「誤用はたくさんあるが、だからと言ってコトを荒らげるのは大人げない」てなことを書いてるそうです。昔から、ずーっと言葉は移り変わり続けた。
そうそう。「三ヶ所」なんかの「ヶ」。これを「読み方は カ だろ」ってんでわざわざ「三カ所」と書く人がいるけどこれは大間違い。「ヶ」は「箇」から取ったものなので「三カ所」じゃ意味不明になる。正しくは「三箇所」、読みやすくするんなら「三か所」なんだそうです。へぇー。
とかなんとか。けっこう難しいお話が続きます。で、中頃は洪積世・沖積世。洪水で積もったから「洪積世」はともかく、沖に積もって「沖積世」じゃ意味をなさない。どうしてこうなったか、とか。細かい理由はともかく、そもそも中国において「沖」という字は使用例が非常に少ないらしいです。せいぜい数例。要するに中華文明は海を無視している。海なんか嫌いだあ。
後半は肩の凝らないエッセイです。これもなかなか良かったです。例によってですが、軽井沢の話の成り行きでなぜか中村真一郎が槍玉に上げられてます。高島さん、どうしてもケンカしないと納まらない人みたいです。あは。