たぶん前に読んでると思うのですが、完全に忘れているので再読。
大げさに表現すると涙が出そうです。数ページ読んだだけで気分がよくなってくる。文章がまっとう。きちんとした日本語で書かれている。ある程度の作家なら当然のはずですが、最近こうした格調ある日本語を読んだ記憶がない。
別に気取ってるわけじゃないんですよね。けっこう平俗な単語や表現も多いんです。でも行間から品のよい香りが漂ってくる。たぶん主語・述語・修飾語・目的語の関係がきっちりしているのだと思います。そうした良質な日本語から最近はいかに遠ざかっていたか。
明晰という言葉があてはまるのかな。うん、明晰な文章と言うべきでしょうね。
内容も面白いです。ピレネーの南の僻地スペインとはどんな地形で、どんな気候・国土なのか。レコンキスタとは何だったのか。文明化とフランスやイタリアとの関係。その国土に暮らす民衆の貧しさと頑迷さ。新大陸から豊富に流入した金銀がなぜスペインを豊かにすることができなかったのか。
そうしたスペインの土壌に生まれた精力抜群で怒りっぽくて身勝手な男、ゴヤがいかにのしあがっていったか。地位と金をつかもうとあがいたか。そのあたりが第1巻「スペイン・光と影」の内容です。