堀田善衛の「ゴヤ 2 マドリード・砂漠と緑」、最後まで読みきれずに返却しました。
何故なんだろう。文章は明晰で、当時のマドリード事情(ちょうどフランス革命のあおりを受けている頃)の解説も平明。背景は非常に面白いです。手にとってページを開けばスルスルと数十ページは進みます。でもなかなか「手にとる」こと自体が少ない。
読みたい・・・という強い気持ちが薄いんでしょうね。
何故だろうと考えてみると、まだ主人公のゴヤが魅力を持たないのが理由のような気がします。成り上がってマドリードの上流社会にある程度は受け入れられ、宮廷画家(だったかな)にもなった。お金はザクザク入っていて「金貨に黴が生える」ような状況。
ただ描かれている絵は、正直いってまだ上手じゃありません。粗野。いいかげんな絵が多い。おまけに本人は自己顕示欲の固まりで、謙虚さのカケラもない。成り金趣味。苦労をかけた女房には冷たいし、世話になった恩人とは喧嘩ばっかり。
要するに、この段階のゴヤには魅力がない。たぶんこの後で病気になって聴力を失い、いろいろ苦労したり考えたりして厚みも増すんだろうと思います。もっと読み進めばまた違うのかも知れませんが、いまの段階のゴヤはつまらない。単なる俗っぽい小物。
また気分が変わったら再読してみますか。