★★ 白水社
山本周五郎といえば木村久邇典と思っていましたが、こんな人も書いている。ずいぶん分厚いし新しいし版元も白水社なんで、借りだし。
一読。けっこう飛ばし読みしました。この本、「周五郎の作品解説」ではなく、あくまで「周五郎という人間\論」なんですね。幼少期がどうだったとか、恩人に対する態度がどうだったとか、女がどうだったとか、勘違い男だったとか、かなり嘘つきだったとか、ストリンドベリがどうだとか。
あまり楽しい本ではなかったです。ほぉーという新事実もたくさんありましたが、なんか鬼の首をとったような自慢たらしい(そう感じる)著者の書きっぷりがイラついてきます。
なんやかんやの評論家や作家の文章をあちこちから引用しながら、なんとか自分の論拠を正当化してばっかり。(そういう印象が強く残る)
なんですかね、随所で弁解はしていますが、要するにこの人は周五郎が好きではない。対象を好きではない好例としては、たとえば猪瀬直樹の「ピカレスク 太宰治伝」なんかがあります。猪瀬はグチャグチャ悪口書いてますが「そりゃ性格合わないし、嫌いなんだろうなあ・・」と読者が納得できる。けっこ理詰めで楽しくスッキリ読める。本当は「愛憎」というべきなのかな。
どこが違うんでしょうかねぇ。「周五郎伝」は、なんか後味が良くないです。書かれていることは事実としても、気分の悪い本。周五郎伝ファンにはお勧めしません。