★★ 明石書店
2010年検定ということなので、かなり新しい教科書の翻訳です。
前にロシア版の歴史教科書も読んだことがあります。ただし通読はさすがに無理で、前半だけだったかな。で、今回は韓国の高校生向け教科書。
中身の3分の2くらいは近現代史。日清戦争あたり以降ですね。それ以前の歴史に関してはあまり力が入っていない印象です。ま、半島にはなかなか統一国家が生まれないし、しょっちゅう満州あたりの新興国家が攻め込んでくるし、ゴチャゴチャしています。というより、半島を含めた広い東アジア北部で国が興ったり沈んだり侵攻したり、結果的に半島部分に統一国家が誕生し、それが続いたということでしょうか。その地域に住んでいた人々を称して朝鮮民族(あるいは韓民族)という名でくくった。
ごくあっさり簡略化するとゴチャゴチャ→新羅→高麗→(元)→高麗→李氏朝鮮→大韓帝国→日本統治→連合軍統治→(韓国・北朝鮮) かな。
ちなみにこの教科書では「朝鮮半島」ではなく「韓半島」です。ま、お好きにどうぞ。
ただ正直いうと、思ったよりは偏向していない感じです。もちろん日本は「奸倭」だったり「日帝」だったりしますが、そのくらいは想定内。ロシアに対しても中国に対してもそれなりに非難のトーンで描かれています。ただ「日帝」はちょっと別格の悪役という扱いでしょうか。抑えきれない感情が加わる。そうそう、米国もかなり悪者です。
通して読むと、半島国家ってのは大変なんだなあとわかります。というより島国である日本の方が例外なのかもしれない。
すぐ隣に中国がいる。馬鹿にしていた日本にも悪さをしかけられる。そのうちロシアも南下してくる。千載一遇の機会だった1945年にも日帝打破の実績をつくることができず、米国の管理下になる。おまけに朝鮮戦争で荒廃し、大統領は独裁だしクーデタは頻発するし、北には困った首領がいるし、豊かになったのはほんの数十年前。政治は混乱しているし国民は団結しない。
なるべく冷静かつ客観的に記述しようとはするものの、あんまり惨めな事実は強調したくないし、多少の成果は少し誇張もしたい。当然の気分です。
ほんと、大変です。それが実感できただけでもよかった。