幕末から明治にかけて生きた不器用な旗本、大谷木醇堂という人のお話。なまじ多少の能力があったのに不運にも(と本人は思い込んでいる)まったく出世できず、ウジウジ文句たれつづけ。嫉妬と偏見に満ちた膨大なメモを残した。実在の人物らしいです。
レンズが歪んでいるだけに人物評はかえって面白い・・・はずなんですが、あまりにも偏っているため、読むのかちょっと辛い。ま、こんな人がいたと知っただけでもヨシとすべきか。
もうひとつ。
「教科書には出てこない江戸時代 将軍・武士たちの実像」山本博文
★ 東京書籍
山本博文センセのウンチクものですが、こっちもあんまり感心せず。ちょっと内容が陳腐すぎたせいでしょうか。将軍の暮らし/大奥の暮らし/武士の出世/天皇と公家の暮らし・・とあるんですが、あまり楽しめなかったです。
そうそう。江戸時代の「勘定奉行」ってのは、現代人が想像するほどたいした役ではなかった。したがってヘボ作家が書くような、たとえば五千石の旗本が勘定奉行の地位を狙って暗躍・・というような筋書きは不可能。そんな格下の地位を画策するなんてことはありえない・・だそうです。要するに幕府の役職ってのは地位が低くて有能な連中のためのものだった。
wikiで調べてみたら、いわゆる「大身の旗本」ってのは、二千石、三千石クラス以上だったみたいですね。五千石の旗本だったらもう大いばり。ほとんど大名に近い。