こういう事件がほんとうにあったのかどうかは知りません。実際には事件後もしばらくお東は館に居住し、政宗との手紙のやりとりもあったらしい。そのあとで理由は不明ながら最上へ行った。要するに真相は闇の中。
それはそれとして、毒殺未遂説にのっとったこの脚本、上手に構成されています。置毒を決意する過程とか実行犯の侍女(おちゃこ)とか、みんな巧いなあ。トリカブト入りの山鳥の吸い物をたべてからの政宗のお芝居も特級品。涙をボロボロ流しながらも姿勢を崩さず、冷然と息子に別れを告げる母親もいい。共に地獄へ参りましょうぞ。
奇麗ごとにしていないのもいいですね。政宗が弟を斬る理由は憤怒、復讐です。もっともらしい理由はつけていますが、根底は母への恨みです。だから弟が「母上様に会いたい・・」とかなんとか甘ったれたことを言ったとたん、発作的に刀を振るった。ただし殺した後、プライベートな寝室では悪夢におびえる。けっこう冷たい顔で奥方がそれを見ているのも、うん、なかなか悪くないです。うん。
そうそう。最上へ逃げた岩下志摩。髪が白くなったせいもありますが、表情が一変している。目の力が消えたからかな。妙に清々しくて幼女のように綺麗でした。変貌した妹を抱く原田芳雄。兄妹とは思えないような濃密さです。
もうどうでもいいですが、昨日の官兵衛。関白の御前で、座っている三成におおいかぶさって吠えるなよ。顔がくっつきそう。薩摩処分の方針で対立の構図はいいんですが、恫喝はいけない。智略に富んだ軍師とも思えない。あまりに不作法すぎます。