★★ 中央公論新社
詠んでいないはずはない・・・と思いつつ、記憶が確かではないので借り出し。
もちろん既読でした。既読ですが、ま、ほとんど忘れていたのでヨシとすべきでしょう。前に書いた感想に追加すべきものも特にないんですが、あらためてエリザベスって人は何もしなかったんだなあ。決断しない、結婚も決めない、可能な限り戦争しない、宗教に関しても決定的な行動はとらない。愛人つくって、楽しくダンスして暮らせればよかった。
本人としては一貫して無為無策であり続けたかったんでしょうが、それでもスペインとは戦争します。戦争したというより、相手が攻めてくるから応じたというのが本当でしょう。で、スペイン艦隊は不運に恵まれて、壊滅する。なんというラッキー。
優柔不断な性格なんで、スコットランドのメアリー女王の処置も、迷いに迷った。処刑命令にいったん署名してからも、それを実行するのを嫌がった。処刑の後も、責任者をロンドン塔に放り込んだり。放り込まれた人間は迷惑ですが、なんとなく「女王は優しい人である」という評判にはなる。そうそう、このメアリー処刑の持つ意味は大きくて、要するに「王といえども議会によって処刑されうる」という前例ができた。後のクロムウェルのチャールズ1世処刑とか、あるいはフランス革命でのルイ16世処刑とかに繋がった。
で、まあこうして可能な限りお金を使わず、じーっと辛抱していたら、結果的に英国はヨーローッバの大国になった。あくまで相対的な大国でしょうね。スペインもフランスも戦争しすぎ、予算を使いすぎ、宗教対立にエネルギーを使いすぎて疲弊した。
基本的な政治をセシルに任せたのも成功だったようです。先代はウィリアム・セシル。そして息子のロバート・セシル。生涯通してイケメン男には甘かったけれども、最後の最後では見捨てて政治的判断を優先した。
たぶん、生きている間はそんなに名女王ではなかったと思いますが、死後はバラ色のエリザベス伝説で語られる。ま、次のジェームス一世が酷すぎたので、その反動でしょうね。あの頃はよかったなあ・・という追憶の時代の象徴です。