だいぶ前のNHK、えーと、何という番組でしたか、そうそうクローズアップ現代ですね。物流の話をしていました。このところ物流が多くなりすぎて、トラックドライバーが足りない。危機的状況なんだそうです。
番組の後半ではこの状況を解決するための鉄道とか船舶輸送をテーマにしていました。こうした前向きな動きをとりあげるのはNHKのお得意で、ようするに前途は真っ暗じゃないという主張なんでしょうね。しかし本質は、困った現実にお化粧して誤魔化しているだけのような気がします。
たとえばカラスがゴミを食い荒らして困る。市役所も有効な手を打てない。そうすると「ご近所の力」とかいう内容にして、みんなが知恵と力を合わせれば解決できるんだ・・・というような幻想をいだかせてくれる。なるほど、とも思いますが、でもなんか方向を逸らされたような気もする。
で、物流の話。道路が狭いとか、ガソリンが高いというのが原因ではないようです。ネット普及もあって、とにかく物流が急激に増えた。増えたのに、長距離ドライバーが足りない。なぜ足りないかというと、労務環境が悪い。給与が低い。こんな仕事やってらんねえよ、というのが原因。無理して走れば居眠り運転とか、身の破滅ですからね。当然です。
問題の本質は、なぜこんなに急激に物流が増えたのか。どうしてドライバーの労働環境が劣悪なままなのか。そこになるんだと思います。
たとえばコンビニ。昔は1日1回トラックが配送していたのに、いまでは5回とか6回とか、せっせと配送する。もっと昔のもっと田舎の商店なら、2日に1回とか週に数回程度の配送だったはずです。回数を増やせばそれだけ細かな品揃えができるし、新鮮なものを並べられる。商機が拡大する。要するに売り上げを増やすために配送回数を増やしている。
宅急便、発送しようとすると配送時刻設定の欄があります。やけに細かく区分けされている。内心はどうでもいいんですが、欄があるからどこかにチェックを入れる。チェックされた以上、配送業者はそれに従おうと必死になるでしょう。
アマゾンなんかで注文すると、200円、300円の商品でも(原則)無料配送。そりゃありがたいですが、そんなにサービスする必要があるんだろうか。「本日中に配送」なんてうたってることもあります。そんなに急いでいる人って、どれだけいるのやら。
要するにサービス過剰です。サービスすれば受注がみこめるから、無理してサービスする。サービスしない業者は締め出される。
たくさんの人が集まって見せ物を見ているとき。全員が座っていれば、全員それなりに不自由でそれなりに楽しめます。でも一人だけ中腰になると、もっと見晴らしがよくなる。で、一人が中腰になると、他の連中は見えなくなるので彼らも中腰。全員が中腰になると、そのうち誰かが立ち上がる。そして全員が立ち上がる。全員が立ったら、座っているときは状況は同じになってしまう。
「みんな、座ろうよ」と談合する必要があるんですね。立って見るより座って見る方が、多少は楽ちんです。座ってゆっくりショウを見ようよ。