舞台は都会ですね。時代もほぼ現代。主人公は特に特徴のない平凡なサラリーマンです。
で、主人公は食堂の爆発事故で死亡。フラフラと葬儀場へたどり着くものの、ここの待合室もVIP席(豪華ソファー)と庶民席(安っぽいプラスチック椅子)に分かれている。死んでも幹部役人や金持ち優先です。死んだんですが誰も墓を作ってくれないし骨壺も買ってくれないんで、往生できないことがわかる。
こうして行き場のない主人公はあちこち彷徨い、いろんな死者と会います。野心をいだいて別れた奥さん、強引な地上げで殺された住民、ヘアーサロンで働いていた貧しいカップル、キンタマ蹴られたオカマと若い警官、悪徳病院経営者にゴミとして川に流された堕胎嬰児たち。さまざまな社会矛盾が描かれますが、決して告発ではなく、そのトーンは透明感があります。なんせ見ているのが「死者」ですから、超越している。
登場する死者たち、生々しく怒りはしないものの、泣きます。悲しみの感情だけはまだある。ガイコツになった眼窩から涙を落とす。
まるで長い長い詩のような一冊でした。原題は「第七天」。地元中国の評価は賛否両論のようです。