ちょっと前、映画になったものの原作です。たしか堺雅人が主演だったような。
この著者、どうやら海上保安庁の職員らしいです。で、どうも料理の本職ではなくて、巡視艇で料理番をやっているうちに好きになり、上手になったんじゃないかな。したがって料理を作るときにうるさいことは言わない。何をどうしたって美味しければいいじゃないか。これくらいのいい加減さがないと、極地で過酷な集団生活はできません。
実は前にも南極へ行ったことがあり、その時は昭和基地。昔の昭和基地(たしかオングル島でしたね)は大変だったみたいですが、いまでは快適施設に変貌していて、ホテル昭和基地みたいなものらしい。時代が変わった。
子供の頃は流氷に苦しむ宗谷のニュースに聞き入ったもんです。もちろんラジオ。ソ連のオビ号が救援に行ったんでしたね。はい、この頃の日本は貧乏国でした。南極観測の仲間にもなかなか入れてもらえなかった。世界三流。ソ連とか米国の砕氷船はトン数もあって、厚い氷をグングン割って進む。オンボロ宗谷は薄い氷に囲まれただけで立ち往生。悲しかった。
というわけで2回目の南極越冬に選ばれた著者ですが、今度は昭和基地じゃなくて内陸のドーム基地というところで冬を過ごす。標高は富士山より高いらしいです。したがってペンギンもアザラシもいない。ウィルスもいない。零下50度、60度くらいは簡単に下がる。施設もかなりオンボロで、むさ苦しいところに8人(だったかな)で越冬。
こうした密閉空間では人間関係が非常に問題です。どんなに仲良くても、長期間やっていると必ずストレスがつのる。イライラしてくる。下手すると刃傷ざたとかも(外国基地では)あったようです。
内向的な人は大変でしょうね。さいわい著者はかなり外向的かつアバウトで、というようりそうした態度で暮らさないと続かない。本の中でもかなり遠慮なく他人の悪口書いてます。暴力寸前のシーンもあったらしい、たぶん。
物書きとしては素人なんで、文章ははっきりいって下手です。オーバーに面白く書こうとしすぎる。おまけにTPO、いつ、どこで、どんなふうに・・・という部分がいいかげんです。よく理解できない部分も多々ある。
ま、そうしたことをヌキにすれば、けっこう楽しめる本でした。