「美しき日本の残像」アレックス・カー

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★★★ 新潮社
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以前、司馬遼太郎の対談集に出てきたんでアレックス・カーという名前を知りました。日本の田舎に惚れこんで、徳島の祖谷(いや)の家を買って移り住んだ人です。祖谷は奥山も奥山、なんせ平家落人が暮らしたという秘境です。アレックス・カーにいわせると、日本にはここにしか住みたい場所は残されていなかった。

いい本でした。なんとなく気分よく「美しい日本」なんて言ってるけど、どこが美しいんだ。川という川はダム。海岸はテトラポット。どんな田舎にも立派な林道ができて空には電線、道路傍には毒々しいパチンコ屋がたちならぶ。

アレックス・カーにとって電線とパチンコ屋は天敵です。わずかに残された自然を浸食する害毒。京都が伝統ニッポンだなんてとんでもない。もうダムのない自然の川なんて、日本に数本しかない。そういえばカヌーの野田さんも河川工事を親の仇のように憎んでました。

なんとなく「日本の自然は美しい」という欺瞞の中にひたっている我々に冷や水を浴びせかけるような一冊です。「犬と鬼」も一緒に借り出しているけど、こっちはもっと厳しそうなので、読むのを後回し。