「北斎と応為」キャサリン・ゴヴィエ

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★★★ 彩流社
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応為葛飾北斎の娘です。お栄。北斎が「おーい」といつも呼んでたんで「応為」この二人のことは杉浦日向子が漫画にしてるはずですが、あいにく未見。

で、キャサリン・ゴヴィエというカナダの作家は応為に深い関心を持ってしまった。後書きで書いてますが、北斎の落款が押してあっても実は応為の手になったものが多いのではないか。いや、それどころか晩年の作品は大部分が応為なんではないだろうか。何回も中風の発作をおこした北斎が、ずーっと元気に描き続けたと考えるほうがおかしい。

ただし、多くの画商や専門家は深く詮索したがりません。所蔵の絵が北斎ではないということになると、いろいろ都合が悪いでしょうね、きっと。

ということで、お栄を主人公にした上下巻の小説です。ただし訳は非常に自由に江戸言葉に訳しているので、日本語版の場合、英語版とはまったく別の小説になっています、たぶん。

内容はファンタジーふうというか、幻想的。事実と虚構が入り交じっている。歴史的事実もかなり自由改変されていて(たとえば松平定信がふらふらと長屋に出向いたり)、ま、いろいろ変なんですがこれもご愛嬌ですか。

というわけで、けっこう不思議小説ですが、悪くはなかったです。