北関東の中規模都市の学校で、2年生の死体が発見される。いじめの痕跡があり、携帯にはタカリ、ユスリのメールが多数残っている。で、問題は自殺なのか、それとも仲間からの強要による事故死なのか。
生徒たち、その親、警察、検事、教師、新聞記者。さまざまな視点でストーリーが進みます。非常に自然で、いかにもあるだろうな・・と思わせるようなことばかり。子供たちは子供なりの理由で嘘もつくし、大人に詰問されれば沈黙する。親は錯乱し、悲しみ、相手を責め、自分の子を信頼し、時にはこれを利用して儲けようとする親戚もいる。
点を稼ぎたい署長。捜査にあたる平凡な刑事。対応に苦慮する校長、それに批判的な学年主任、まだ若い検事、新米の新聞記者。ところどころ「?」というような展開もありますが、ま、だいだいは妥当です。通常の人間なら、ま、こんなふうに考え、こんなふうに行動するでしょう。イジメた子供が悪とも言いきれない。イジメられた子供が可哀相とばっかりも言えない。場合によっては女子生徒だって、多少のことはやる。恐いよ。
救いのない小説とも言えるでしょう。でも、たぶん現実はこんなふうなもの。
したがって劇的な展開なんてありません。平凡です。ヒーローが派手にやってメデタシメデタシなんてことはありえない。カタルシス皆無。いちおう真相は判明するものの、何といって解決もなく小説は結末をむかえます。
奥田英朗って、子供の世界を描くと上手ですね。高校生を描いた小説なら他にたくさんありますが、中学生というのはあまり例がないような気がします。