副題は「昭和天皇までの二千年を追う」。要するに天皇はなぜこんなにも長い間、君臨し続けることができたのか、というテーマですね。
平安の藤原氏は権力の源泉を天皇から得ているので天皇にとってかわろうとはしなかった。それは納得。しかし頼朝はどうだったのだろうか。足利義満は? そして誰より信長です。自分が日本の最高権力者になろうとすれば簡単になれた。それなのに何故か天皇制を維持し続けたわけです。もう数年生きていたら違ったかな。家康だって、とくに天皇が必要ではなかったはず。不思議ではあります。
という具合に、日本ではずーっと「革命」が成立していない。つまり王朝が変わることがなかった。天皇が権威と実権の両方を握っていたのはおそらく大化の改新から、ほんの少しの間でしょう。その後は実権を失い、ひたすら権威だけ。つねに飾り物として機能してきた。
結局この本では「なぜ?」に十分には答えていません。権威として存続させたほうが何かと好都合だったから天皇制が継続してきた。それが結論かな。田原総一郎ふうに料理した「平易な日本史」で、二千年をざっと俯瞰したような一冊になってしまいました。
直近ではGHQが天皇制を廃止する可能性もあったわけですが、でもやはり「残しておいたほうがスムーズだろう」という政治判断になった。当時は近衛あたりも「譲位もやむなし」とか進言したりもしたらしい。しか実際には天皇責任はもちろん、改元もなし。そもそも8月15日も「敗戦」ではなく「終戦」です。ウヤムヤにしてしまうのが日本は得意なんでしょう。そういえば巣鴨の収監者も犯罪者だったのか犠牲者だったのか英雄だったのかの総括は結局なし。オボカタさんの話も責任がどうとかいう話にはなっていません。ウヤムヤ。
敗戦の天皇責任については田原も言いたいことはあるらしくて、しつこくモゴモゴ書いてます。でも明確には言い切らずウヤムヤでお茶を濁した。歯切れが悪い。逃げたな。田原総一郎もニッポン人。