「菅原道真 見果てぬ夢」三田誠広

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★★ 河出書房新社
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三田誠広の本、図書館には何冊か並んでいて、みんなタイトルはかなり面白そうなものばかりです。で、実際に借り出してみると、うーん、どうも合わない。そんなことの連続。

今回は珍しく読了しました。えらいえらい。ただし、やはり面白くはなかった。

一応は菅原道真の生涯です。ただし冒頭、なぜか在原業平が登場する。これは??なんですが、なるほど、業平の惚れた女ってのが宮中に入って、結果的に皇太后になる。女のほうも実は色男の在五中将を忘れられない。その相思相愛に他の女が嫉妬して、おまけに藤原北家の陰謀がかかわって、そこに菅原道真も巻き込まれる。ま、そういう形なんだそうです。

すべての原動力は恋と野心と嫉妬。ちょっと不思議な切り口ではあります。

正直、読みづらいですね。なんせ平安貴族のお話なので、次から次へと新しい名前が登場して、出世したり脱落したり。たかが儒者の家ながら右大臣にまで上り詰めた菅原道真です。もちろん周囲は敵だらけ。不器用ながら本人なりに(天下国家のため)立身出世をもくろんだ道真も、最後はスッ転んで太宰府に流されます。

これ、なんとなく単なる左遷人事と思い込んでいましたが、実質的には囚人扱いだったんだそうです。よせばいいのに可愛い末の子供をわざわざ太宰府に連れていって、劣悪環境で死なせてしまう。ほんとうに賢い人だったんだろうか。

そうそう。応天門の炎上事件なんかもこの頃の話です。左大臣源信と大納言・伴善男を蹴落とすための陰謀。黒幕は太政大臣・藤原良房です。あんまり明確には書かれていませんが、菅原道真もコソコソと良房を手助けしたのかもしれません。そう考えるとその後の出世も理解できる。