「しあわせ中国 盛世2013年」陳冠中

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★★ 新潮社
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この作家は初読。香港とか台湾を舞台に活動しているようです。現在は北京在住らしい。ただし著書は大陸で発禁処分

要するに近未来小説ですね。西欧圏が大不況になり、大混乱。体制の違う中国だけが生き残って一種のモンロー主義で内需拡大。つまりは「盛世」の御世です。

景気はいいし国民は幸せだし、ま、党中央はあいかわらず強権だけど、でもいいじゃないか。100人のうち95人が幸せと思っているなら、その社会は大成功でしょう。それ以上、何をのぞむ。最大多数の最大幸福。

でも残りの数パーセントにとっては、合点がいきません。なんかおかしい。どうしてみんな幸せなんだ。オレは(ワタシは)幸せではないぞ。ということで、数人の不満分子が連携し、真相を探ろうと試みる。

ちょっと冗漫な部分もありますが、現代中国の実情を知るには格好の小説です。六四天安門事件のあつかいとかネット監視、中央宣伝部の位置づけ、締めつけとして時折発動される「厳打」キャンペーン。(「厳打」という言葉、この小説ではじめて知りました。一斉取締り。常に行き過ぎとなり、点数を稼ぐため即決裁判でどんどん有罪にされる。)

ま、発禁処分は当然ですね。むしろこんな作家が北京に住んでいられることのほうが興味深い。みなさん、獅子の尻尾の周囲でダンスをしているようなものなのかな。注意深く踊っている限り大丈夫。ステップを間違えると致命傷だけど。