ファースト・ペンギン

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このところ見続けているNHK朝ドラ「あさが来た」ですが、数話前から「ファースト・ペンギン」という言葉が登場しています。主人公である広岡浅子(ドラマでは白岡あさ)に対して、五代友厚が「あなたはファースト・ペンギンだ」と言う。

五代友厚ってのは例の薩英戦争でドンパチが始まったとき、運悪く英軍艦に乗っていたため松木洪庵なんかといっしょに捕虜になってしまった人です。事情として仕方なかったんですが、場合によっては「薩摩武士の名折れじゃ!」とか言われて仲間に詰め腹切らされる危険もあった。少なくとも本人はそれを危惧してしばらく身を隠していたらしい。

要するにちょっとインテリ臭のある人だったんでしょうか。チェスト!とかわめいて自刃するような野蛮なタイプではなかった。その後、なんかの使節団でちょっと英国にも行ったはずです。

その五代、このドラマではハイカラ優男でやたら英語が達者。で、なぜかヒロインの広岡浅子にいれあげてる。ま、それはドラマだから仕方ない。

で、問題は「ファースト・ペンギン」。未知の環境に勇気をもって真っ先に飛び込む人、という意味で使われている。南極の海に群れているペンギンにとって、天敵はシャチやオットセイです。海中で楽しそうにペンギンが魚を獲っていると、そこへ「食ってやる!」とシャチが襲ってくる。ペンギン連中、あわてて氷の上に避難します。まるでロケットみたいにシューッと海から氷の上に飛びあがります。

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で、氷の上に退避していれば安全なんですが、はて、いつ海に戻るか。10分待てばいいのか、それとも1時間待てばいいのか。早く海に戻りたいけれども、シャチが待ち受けているかもしれない。真っ先に飛び込んで食われるのはバカです。

こんなとき「お前、行けよ」「そっちこそ先に飛び込めよ」とペンギン連中は押し合いへし合いします。ゴチャゴチャやっているうちに、なんせ連中は氷上では不器用なので、そのうち一匹がボチャンと海に落ちてしまいます。落ちたぞ・・・・・・とペンギンはいっせいに哀れな仲間に注目。あいつ、食われるかな・・・・。

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海が血に染まればシャチがいる証拠なので、もうしばらく辛抱が必要。しばらく待つことにして、そのうち我慢できずまた押し合いへし合いをする。ただしもし何事もなくファースト・ペンギンが魚を追いかけているようなら・・・・・・安全です、もう大丈夫。群れとしての犠牲を最小限にして、しかも余計な避難時間(捕食タイムのロス)をなくすためには賢い戦術ですね。一匹を犠牲にしてみんなが生き延びる。群れをなして生きる草食動物なんかにはよくあるパターンらしいです。

これが「ファースト・ペンギン」。勇気あるペンギンではなく、そこつで可哀相なペンギン。ただし結果的には「気高い挑戦者!」と称されるかもしれませんが。

以上、なんかの本で読みました。こっちのほうが「勇者!」より納得できます。