通常はやらないのですが、たまたま「一路」の上巻だけを発見したので借出し。
ま、想像通りの 浅田コメディですね。ところどころに泣かせも入っていますが、過剰というほどでもない。なかなか良かったです。浅田次郎はたいてい読めることが多い。
江戸で修行していた青年が、父の死亡で国元へ帰る。父は道中奉行じゃなくて、えーと「御供頭」でした。それが急死したもので、なんにも知らない主人公が参勤交代の責任者になる。
きちんとした大名家ならこんなバカな話はないです。しかし主人公の主君は家格が高くて交代寄合七千石程度の旗本。地方在住。そのため大名なみに参勤交代をしなければならない。どっちにしても家来の数も多くはないし、参勤交代の詳細を知ってる担当者なんて他にいるわけがない。
で、古い資料を発見して「参勤交代は行軍である」 と読み、その資料通りに行軍してみようと決める。戦国の世がおさまって間もないころの古い古い道中メモです。家康から拝領の巨大な朱槍を先頭に、時代錯誤の甲冑武者が随伴する。そんな面倒なこと、ずーっとやっていなかったんだけど。
例によってのバカ殿様があんがい面白いですね。殿様なんて暗愚なほうがいいわけで、周囲からもバカ扱いされてるんですが、実はこの殿様、本当はバカではないのかもしれない。ただし子供の頃からのしつけが効いていて、けっして出しゃばらない。主体的なことも言わない。うかつに言うと恐い爺から「若様!」と怒られ続けてたんでしょう。殿様をやるのも大変です。
楽しく読みましたが、たぶん下巻は探さないと思います。