正確には「路」ではなく「王偏に路」です。「たんろみ」と読んでいいらしい。日本の大学でも教えている中国人作家。
で、表題はもちろん孫文(逸仙)の有名な言葉ですね。死ぬ前にそう言いのこした。
内容は「孫文は何をなし、同時代の政治家、革命家たちはどう動き、日本はそれにどうかかわったか。日中百年の群像」ということ。ごく大筋ならある程度知っているものですが、その詳細は実に複雑で次から次へと登場する人名を追うだけで頭がワヤになる。犬養毅、宮崎滔天、頭山満など日本側のかかわりも、思っていたより濃密だったようです。
政治家たちは国家建て直しを献策し、各地の革命家たちは何回も何回も蜂起し、そのたびに挫折する。指導者それぞれ方針も違うし妥協したり反発したり、殺されたり殺したり。ずーっと読み通した感想としては「要するに革命運動は金しだい」ということでしょうか。孫文は世界中を旅して講演し、有力者を説得し、金を集め、武器弾薬を用意し、蜂起して失敗する。ほとんどの場合、資金が足りなかった。資金さえあれば成功した蜂起もたくさんあった。
では孫文は何をした功績をもつのか・・というと実は難しい。ただ若い頃から粘り強く「革命、革命・・」とアジテーションを続け、世界中の華僑から金を集め、一種の象徴になっていたんでしょうね。現実の政治家としての能力には「?」が少し残ります。
歴史資料本としてもなかなか充実した一冊でした。充実しすぎているというべきかな。一回読んだ程度では完全に消化不良です。文章は柔らかく、かなり読みやすいです。