「うらなり」小林信彦

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★★★ 文藝春秋
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前から読んでみたいと思っていました。漱石の「坊ちゃん」を、違う視点から眺めたらどうなるんだろう・・という本です。「うらなり」はもちろんマドンナに見捨てられる存在感のない英語教師ですね。延岡へ追いやられたうらなりは山嵐や坊ちゃん、赤シャツをどう見ていたのか。

もちろん、あの江戸っ子坊ちゃんの言動は迷惑至極で、デリケートなうらなり氏の心をグサグサ突き刺す。本人がまったく気がついていないのが困る。だいたい「うらなり」なんて失敬なアダナをつけることだけでも無神経さがわかりますわな。

で、坊ちゃんと山嵐が自分勝手に騒ぎまくって殴ったりタマゴをぶつけたりして、何がどうなったのか。何も変わりません。うらなり氏は延岡に赴任して、相変わらず静かに辛気臭く人生を生き続けます。それが、悪い?

静謐な文体です。田舎で静かに暮らしてきた老教師が所要で東京へ出てきて、羽振りのいい山嵐に会う。山嵐も悪い奴じゃないんですが、ちょっと精力がありすぎて老人にとっては対応に疲れます。人生ももう終盤。うらなりはひたすら静かに暮らしたい

菊池寛賞受賞だそうです。それほどの傑作とも思えません。★★★にしましたが、本当は★★半くらいな気もします。