全4巻。何カ月かかけて少しずつ読み進み、ようやく最後までいきました。何回目かな。調べてみたら2003年に巻2と巻3だけ再読している。全巻通しては20年ぶりくらいかもしれない。
村松剛の文体はいいですね。品がある。読み心地が爽やか。どうやって木戸を調べたんだろうと疑問に思っていましたが、どうも「松菊木戸公伝」という膨大な資料があるらしい。木戸は若いころから日記をつける習慣があったようで、かなり詳細です。ただしページ見本を見ると、こりゃ簡単に読めるようなものではありませんね。
木戸というのはマメな人だったらしく、毎日々々人と会い、話を聞き、人の世話をしては酒を飲む。勉強をする。日記をつける。もちろん女遊びもする。忙しいです。大変だ。忙しく暮らして天下国家を憂いて鬱屈して胃を痛くして、たぶん胃ガンで死んだ。享年45歳。若いです。
通読しての感想ですが、明治10年までというのは、ほんと、何がどう転んでもおかしくない時代だった。伊藤とか大隈とか井上、板垣、江藤・・・どいつもこいつも書生気質で勝手なことばかりやる。若いですからね。ひょいと思いつくとすぐ走り出す。英国領事館を焼き討ちしようぜ・・のノリで簡単に朝鮮出兵を画策し、台湾へ勝手に乗りだす。
これだけみんなが勝手なことをやり、策謀したりライバルを蹴落としたり和解したり金を浪費したり、各地で一揆や暴発がくりかえされながらなんとか国が保たれた。木戸と大久保という薩長のリーダーがケンカをしながらも決定的な危機になると協力しあったというのが日本にとっての幸運だったんでしょう。
で、木戸は明治10年に死ぬ。西南戦争の真っ只中です。大久保は明治11年に死ぬ。この二人が良くも悪くも荒療治をやって明治国家の大筋路線をつくり、だからその後はたぶん大隈とか伊藤とかの二流が適当に運営できた。
こんな程度の短い文章で感想を書ききれるもんじゃないですね。また10年くらいしたら読み直ししないといけない。生きていたらの話ですけど。