さして考えず借出し。山本七平の70年代あたりに書いたものを集めたようです。当時は常識だった言葉にも今では詳細な解説がついている。たとえば「日ソ漁業交渉」とか。知ってるつもりでしたが、はて200海里問題って何が焦点なんだったっけ。あんがい覚えていない。担当大臣は誰だったっけ。
で、収録されているのは、ま、タイトル通りのテーマなんですが、時間がたつと薄れるもんですね。山本七平の独特の論理建てがたいして斬新にもうつらない。
いろいろ述べていますが、面白かったのは、日本は先進国である中国や西欧から文化文明を取り入れる際、どっぷりはまらない性格があったということ。しっかり入学して、丸ごとしっかり勉強したりはしない。いわば聴講生のように、自分の興味のある部分だけ採用する学生だった。
かなり自分勝手。要領がいい。偏っている。だから「世界」を理解しているようで、実はたいして理解していない面が多々ある。決して「グローバル」じゃないんです。日本の常識と世界の常識は違う。それをわきまえて外国と付き合わなくてはいけない。
ずいぶん前に亡くなった父が「日本は中国からたくさん学んだが、三つのものだけは採用しなかった。宦官。纏足。靴の三つ」とか能書きたれてました。確かにそうです。こうしたものも丸ごと採用すれば優等生の「文明国」になれたんでしょうが、辺境の島国は頑固に拒否した。その点が朝鮮半島とは方向性が違った。
たぶん、いまでも日本は普遍的な文明国ではないのかもしれない。ほんの少しだけど、ズレでいる。外交交渉がスムーズに運ばないのは、そこに理由がある。