「お言葉ですが別巻6 司馬さんの見た中国」高島俊男

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★★★★ 連合出版

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シリーズは何冊か読んでいますが、この巻がいちばん面白かった。

なんでだろうな・・と考えてみると、要するに専門である「漢字」「音韻」などの話が比較的少ない。漢字の話も悪くはないんですが、やはり専門的すぎるんですかね。完全には理解できないし、読んでいると疲れてくる。

それにしても高島俊男ってのは、恐いもの知らずでバッサバッサと切り捨てる。困った爺さんで、敵ばっかり作っている。もう少し筆致を押さえれば世の中を上手に渡れたんでしょうが、イヤなんでしょうね、きっと。遠慮なく作家や評論家、訳者をやっつけるだけでなく、有力出版社にも噛みつくから、なかなか大変。このシリーズも「連合出版」というマイナー出版社(たぶん。偏見です ※注)からしか出させてもらえない。金持ちにはなれません。

たとえば儒学の話。そもそも儒学ってのは、春秋戦国の後、統一国家をまとめるのに都合のいい思想なので、いわば国家宗教になった。それなりに有用ではあったが、以後の中国二千年、なーんも発展せず、どんどん劣化して社会を停滞させ、害悪をなしていく。日本の場合は四書五経は輸入したけど「儒教文化」には関心なかったので、そんなに悪くはなかった。つまり日本の儒者はまったく有害ではなかった。害をなすような力が皆無だったから。その点、国学は困ったことになまじ影響力をもったために非常に害をなした。

そうそう。日本で歴史を贋作するというか、影響力、勝手なイメージを作り上げてしまった元凶は3つあり、日本外史、司馬遼太郎、NHK大河ドラマなんだそうです。坂本龍馬なんて「維新の功績としてはまったく何もしていない」とバッサリ。それを司馬遼太郎が魅力的な英雄象を描いて「日本の常識」にしてしまった。ただし高島俊男の良いところは「だからけしからん」とは言わない。そういうもんでしょ、と諦観している。

この人のものの見方、かなり好きです。

労組の連合ではなく、旅関係の本をよく刊行している出版社みたいですね。無知。知らなかった。

あゃゃ、この本、前にも読んでた。2年前。なんとまあ。モウロク。言葉もなし。