「老生」賈平凹

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★★★★ 中央公論新社

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賈平凹という人、中国では莫言とならぶ有名作家らしいです。ただしまったく読んだことがなかった。

もうかなりの年配らしく、後書きではちょっと歩くとすぐ息があがるとか書いています。やれやれと道端に腰を下ろして、妻子が文句いうのも気にせずタバコを吸う。で、紫煙を漂わせながら来し方を思う。そんな心境が「老生」というタイトルになっているのでしょう。

本の内容は国共内戦期、土地改革と人民公社、文化大革命、そして開放期を描いた4つのストーリーです。舞台は西北部の陝西省。かなりの僻地らしいです。その地域の小さな村々がどんな具合に翻弄されたか。村人がどんな具合に欲望に身をまかせ、罵りあい、足を引っ張りあい、泣き、殺し合ったか。

雰囲気はかなり莫言のそれに似ていますね。賈平凹は陝西省、莫言は山東省。ひたすら土俗的。暴力的。同じようにユーモラスでもありますが、もう少し毒っ気がある

語り部は百歳を超えたかもしれない放浪の弔い師。死者が出たとき弔いの唄をうたう慣習があるらしいです。そしてもう一つ、死に瀕した老弔い師の住む洞窟の外では、謹厳な教師が少年に山海経を教え込んでいる。山海経(せんがいきょう)、書名だけはぼんやり聞いた気もしますが、ひたすら中国というか世界の山々や海、産物と奇獣神獣について延々と解説した奇想天外な書物のようです。初めて知りました。

訳者は吉田富夫。現在刊行されている莫言の小説は、大部分がこの人の訳です。登場人物はみんな訛りのきつい田舎言葉でしゃべり、独特の雰囲気をかもしている。そうした雰囲気が原書の訳としてふさわしいのかどうかは不明で、半分くらいは作者と訳者の共著のような印象になっています。

なんか説明になっていないようですが、なかなか面白い本です。そんなに厚くないですが、読了するのにけっこう時間がかかる。機会があったら他も読んでみたい。

そういえば、莫言の「転生夢現」「白檀の刑」を読んだときも、つい★4つを付けてました。こういうスタイルの小説、好みなんだろうか。