「紅楼夢 巻1.2.3.4」曹雪芹

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★★★ 岩波文庫
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読めるかどうか不安でしたが、なんとか文庫全12冊の4巻まで終えました。すごく面白いというほどではないですが、もう飽きた・・でもない。やはり続く巻も借り出してみますか。

時代は清朝の中期。たぶん乾隆帝の頃でしょう。場所は北京とも南京とも不明で、あいまいになっています。ま、さしさわりの問題。

主人公の宝玉は名門貴族の御曹司で、おそらくまだ12~13歳なんですが、軟弱な坊ちゃんです。小説読んだり詩をつくったりはするけど受験勉強は大嫌い。根っから女の子たちが大好きで、きれいな着物を着たり装身具に凝ったり、小奇麗な女中にまとわりついて口紅を食べたり。それでも可愛いから許されている。

お屋敷の形式的な実権者であるご隠居婆ちゃまは孫を猫っ可愛がりに甘やかしている。しかしさすがに父親は厳しいので、なるべく寄りつかないようにしているわけです。(儒教の中国、親の権威はすごい。場合によっては死ぬほど笞で殴られる)

ま、そういうお屋敷にいろいろ理由があって12人の美人(といっても大部分はローティーン)がうろうろしている。寄ってたかって遊んだり食べたり詩をつくったり花をむしったり、毎日をぷらぷら暮らしているわけで、ま、ひたすらそうした描写で全編が埋められている雰囲気です。そうそう。ここに多数の侍女や女中たちも絡んでいつも笑いさざめいています。幹部クラスの侍女は給金が銀子一両。粗末扱いの親戚には月額銀子二両とか三両。実はこんな細部がけっこう面白いです。大きな出費をする場合にはきちんと割符に書き込んで、それを表の経理部に提出して出金してもらうとか。

いまのところ、とくに深刻な事件は起きていません。可愛い少女とたわいなくケンカをしたり仲直りしたりしている程度。そうですね、源氏物語から深刻な恋愛を抜いたようなもんでしょうか。源氏なら歌のやり取りですが、こっちでは何かというと五言とか七言とか詩が披露されます。このあたり味わいがこの本の神髄なんでしょうね。

訳者の松枝茂夫という人が柔らかく砕いているので、全体にけっこうすんなり読めます。ちょっと卑俗な印象の言葉も交わされますが、ま、そんな感じなのでしょう、きっと。

いまのところ、当方の贔屓は「王熙鳳」です。口八丁手八丁で気の強い若奥様。屋敷の内向きを切り回している。惜しいかな、ちょっと品はない。でもこういう人がいないとうまく運営できないです。このお屋敷、栄華をほこっていますが、内実はかなりボロボロになりかかっているようで、きっとそのへんが中盤後半になると露呈するんでしょうね、きっと。