「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ

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新潮文庫★★★
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人見知りで不器用で気弱・・と自分で思い込んでいる女が、もう死んでしまおうと(必死に)決心して、やみくもに北行きの列車にのり、更に嫌がるタクシーつかまえて「とにかく北へ行って!」と強要。山の中(かつ海のそば)のさびれた民宿にたどりつく。裏日本の海です。

で、汚い民宿の数年ぶりの客となって、勇気をふりしぼって計画通りに睡眠薬。湿気た布団の中でぐっすり眠って快適に目覚める。この落差が楽しいです。

民宿の主ってのはまだ若いけど汚い大男で、でもあんがい有能でもあり(というより女がべらぼうに無能でズレている)そのまま1泊1000円の客として長逗留。きれいな空気を吸ったり、うまい米を食ったり、星を眺めたり、飲み会では近所のオヤジたちに大モテだったり。

薄い文庫ですが、非常に楽しい一冊でした。文体にリズムがあって軽やか。民宿の主との交流はありそうでなさそうで、はて、どうなるのか。