阿刀田さんの書くものは、正直、あまり面白くない。面白くないけど、ときどき借り出してしまう。
今回のこれも旧約をいろいろ説明していて、ま、平凡な内容です。ただところどころに手塚治のマンガが挿入されているのがミソ。これもどうという内容ではないけど、手塚の絵は雰囲気があるんですよね。火の鳥の黎明編あたりの印象です。
ザッと読んでひっかかった点。
旧約の「神殿」の大きさです。単位はキュビト。肘から中指の先までの長さで、だいたい44センチ強。で、たとえばノアの方舟は長さが300キュビトだそうです。換算するとだいたい140メートル。ま、納得かな。
ところが栄華をほこったというソロモンの神殿は長さ60キュビドで幅が20キュビド。だいたい27メートル9メートル弱。神殿なのでそんなものかもしれませんが、作るのに7年もかけた。そして問題は宮殿です。これが長さ100キュビド、幅50キュビド。えーと、45メートルの22メートル。990平米くらいですか。300坪弱。
300坪の建坪って、そう驚くほどではないです。宿屋や個人住宅としてならべらぼうな広さですが、なんせ宮殿です。しかも名にし負うソロモンの宮殿。
このスペースに大広間があり控えの間があり、シバの女王が休憩した部屋があり、もちろん衛兵の控室もあり、台所もあり・・・と考えると、どうみても手狭すぎる。間口12間ということになりますが、ひょっとしたら幕末の越後屋のほうが広いかもしれない(※)。ちなみに皇居と比較すると、宴会なんかでよくテレビにうつる豊明殿が915平米らしいです
もっと不思議なのは、旧約関係のいろんな解説本、「あんがい狭い!」と書かれたのを目にしたことがない。どれもこれも「さすが豪華な神殿、宮殿」と讃えるだけ。どっかで固定観念に目が曇っているような気がします。
※ 駿河町越後屋は間口35間あったそうです。60m以上。