角川書店 ★★★
貴志祐介はけっこうアタリの作家です。いろんなジャンルに手を出していて、ちょっと叙情性のある少年ものの「青の炎」、ブラックユーモア系の学園バイオレンス「悪の教典」、FSでは長大な「新世界より」とか。ただしアタリではない小説もときどきあって、今回の「ミステリークロック」もその類かな。
「ミステリークロック」には「ゆるやかな殺人」「鏡の国の殺人」「ミステリークロック」「コロッサスの鉤爪」の4編が収録。失敗作とは思いませんが、どれも密室殺人のカラクリが複雑すぎて、すんなり理解は難しい。真面目に追っていくと疲れます。
そうそう。最後に収録の「コロッサスの鉤爪」だけは割合とっつきやすかったかな。「ゆるやかな殺人」も要点が少なくて比較的スッキリした短編でした。
ちなみにミステリークロックとは、たとえば透明な円盤に針だけが浮かんで動くような、不思議な作りの時計のことです。内部構造が見当もつかない。傑作と称されるようなミステリークロックは非常に価値があって、ほとんど美術品。そういうもののようです。