「とてつもない失敗の世界史」トム・フィリップス

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河出書房新社★★★
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ま、タイトル通りの内容です。書き手は英国人ジャーナリスト。英国人って独特のユーモアセンスがありますね。やりすぎ。ズレている。なにからなにまで洒落のめす。そういう本です。

冒頭、かの有名な類人猿(じゃなくてアウストラロピテクスか)から話は始まり、え? ルーシーって木から落ちて死んだのか。もちろん絶対じゃないけど、さまざまな状況証拠から、どうもうっかり木から落ちて(首の骨でも折って)亡くなったらしい。科学史にのこる失敗。知らんかった。

そもそも人間というのは「認知バイアス」の生き物。何かを知る・見る・認知するのに必ずバイアスがかかる。真に客観的、科学的に知ることはできない。したがって人間が行動し、何かを作ると必ず失敗する。アホなことをしてしまう。王様も失敗するし、庶民も間違う。みーんな間違う。歴史ってのは、ま、そういう愚行の連続です。なんとまあ多いことか。ヒトラーを総統に選び、フロンを製造し、有害な有鉛ガソリンを開発し、空気を汚染する。

そうそう。初めて知ったこと。ソ連の学者というとルイセンコが困った男の代表ですが、そうではなくて1960年代にソ連の科学者が発見した特殊な「水」の話。ふつうの水を特殊な細い管に通すことで水の性質が粘性をもって劇的に大変化する。べらぼうに有用。名付けて「ポリウォーター」

で、大騒ぎになった。日本でも最近「STAP細胞はあるんです!」がありましたが、あんな程度ではなく、世界中の学者をまきこんだ大騒動になったらしい。みんなが追試して、なぜか次から次へと再現された。汚れたシャツを洗った水なんかだと、いっそう簡単にポリウォーターがつくれる。

で、大騒ぎの末、要するに最終的には・・・・・嘘だった。間違いだった。誤解だった。勘違いだった。称して「ポリウォーター」事件。これだけでなく、同じような虚構の大発見、ときどき発生しているようです。大昔にはX線に匹敵するN線というのもあったそうですね。知らんかった。