中央公論新社★★★★
上・中、下巻。ずいぶん昔に買った本なので、表紙は汚くなっています。たぶん読み直しは4回目くらいかな。(※)
えーと、ユリアヌスってのは4世紀初め、ローマ帝国の皇帝。キリスト教を抑止しようとしたんで後世に嫌われて「背教者」なんていわれた。分裂ローマを統一したコンスタンティヌス帝(4世紀初め)の甥ですね。ただこの頃の皇帝というのは、血筋じゃないです。たいてい軍人あがり。実力で皇帝になった。
で、コンスタンティヌス帝は(キリスト教を優遇したこともあってか)大帝と称されました。息子が3人いて、それぞれ正帝として西・中・東ローマを領有。しかし死後は例によって戦いが始まり、結局は次男(つまりユリアヌスの従兄弟)のコンスタンティウス(名が似ている)が統一ローマの皇帝になります。
猜疑心が強かったといわれていますね。だから将来目障りになりそうな叔父のユリウスを早めに殺した。これは単に(潜在的な)敵対勢力を消したというだけでなく、反キリスト教勢力を叩いたという一面もある。つまり父コンスタンティヌスは初めてキリスト教を優遇した皇帝でした。これが国内統一になかなか効果的だったらしく、見習って次のコンスタンティウスもキリスト教を大切にする。もちろん古いタイプの反対派もいて、その伝統派代表がユリウスとみなされていた。
で、ユリウス一族を抹殺したはずなのに、たまたま生き残ったのが二人の子供たち。幼いガルスとユリアヌスの兄弟です。生き残ってしまうといまさらおおっぴらに殺すわけにもいかず、以後はひっそり保護・監視の対象とした。
で、ずーっと逼塞していましたが、そのうち流れが変わってガルスは副帝にしてもらう。なぜならコンスタンティウスにはもう血族がいないわけです。他の部下連中が信頼できなくなると、仕方ない、せめて血の繋がっているあいつを使うか・・ということになり、東方担当として派遣。でもすぐまた信用できなくなる。で、殺す。しかしまた必要にせまられる。残りは一人しかいないので仕方なく(現世欲のなさそうな)ユリアヌスを副帝にする。今度は西のガリアに派遣。
ちなみに副帝とは「カイザル」ですね。取締役で支社長。正帝は「アウグストゥス」です。社長。
ということでストーリーが始まるんですが、この本、きっちり読もうとするとなかなか大変。辻邦生さんの端正な文章がえんえんと続いて、ああ気持ちいいなあ・・・とは思うけど、実は非常に疲れる(※)。なんせ哲学大好き思索皇帝が「ローマの正義とは何か」なんてテーマで2ページくらい演説します。面白いんですけどね、そのうち飛ばし読みになってしまう。
今回はなるべく文字飛ばしをしないようにと思っていましたが、やっぱり飛ばしてしまった。この地味な部分に味があるんだけど。
※昭和50年の刷りでした。1975年。ほぼ半世紀近いか。
※大岡昇平のレイテ戦記なんかもそうですね。魅力あるんだけど、読み通すのが辛い。