大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を見ているとよく分からない部分が多々。興味があったのでちょっと安易ですが、永井路子の歴史小説を借り出してみました。鎌倉時代初期をあつかった「炎環」。4つの章にわかれていて、登場人物は悪禅師(義経の兄・全成※) 黒雪賦(梶原景時) いもうと(政子の妹 阿波局) 覇樹(北条義時)。いちおう独立した短編ですが、ま、連続ものですね。
なるほど。二代将軍頼家の立ち位置、弟の三代実朝。ある程度理解できました。中学生の頃に読んだ岡本綺堂の「修善寺物語」だったか、それとも菊池寛か坂口安吾あたりの小説だったか。子供心になんか頼家という人が哀れで、そもそも何で追放されたのかが理解できなかった記憶があります。
今回は暗殺者となった公暁という人についても多少は背景がわかりました。みーんな時政や政子、あるいは義時、阿波局(大河ドラマでは実衣)のせいで(都合で)人生を振り回された。
ただ永井路子はこの小説で直木賞を受賞したようで、でもまだ若かったんでしょうか。とくに男性3人がみんな同じような造形に感じられます。冷静で観察力があって、まるで兄弟。カッコいいけどワンパターンです。惜しい。
ほんの少し不満はあるけど、でも面白いです。一気に読めました。四郎(義時)という男は探そうとするといつも姿が発見できない。そんな表現だったかな。まるで影みたいな演出者として描かれています。院を断固として制圧し(※)、静かに、地味に北条家を確立した。ちょっとかわった権力者です。
※ 常盤御前が雪の中を落ち延びたとき連れていた(ということになっている)3人が今若、乙若、牛若。で、いちばん上の今若が阿野全成です。
※ 天皇・上皇を例外とせず京都朝廷を徹底的に処分したのは北条政権だけですよね。徳川も多少はやったけど、ま、穏やかな形だったし。