「絵巻/執念の家譜/裾野」永井路子

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中央公論社★★★

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永井路子歴史小説全集」の後半です。

「絵巻」は『字でかいた絵巻』だそうです。平忠盛、丹波局 丹後局、平知康、源通親、藤原兼子などを主役にした「絵」の部分と、それをつなぐ「字・詞書」の挿入部分が静賢法印日記。

しらない人物がやたら多いです。忠盛は清盛の父親ですね。これが「すがめ殿」。丹後局は後白河が可愛がった女らしい。ごく平凡な後家だったのがなぜか後白河と相性がよかった。これが「寵姫」。
「打とうよ鼓」は鼓判官といわれて嫌われながら世渡りした平知康。そして「謀臣」は源通親。やたら美男子で女にもてた政治家らしいです。「乳母どの」は鳥羽上皇のお気に入りだった乳母。

ま、そういう短編をつないで京の政界事情を描いた。ちなみに静賢法印は信西入道の子供で、後白河の側近。もちろん信西は保元の乱の立役者。平治の乱で逃げて穴ほって隠れたということになってる人です。
ちなみに後白河とはどういう人物か。近くに仕えたこの静賢法印の観察(=永井路子の解釈)は非常にわかりやすいです。日本一の大天狗などではまったくなく、完全な政治音痴。そもそもまったく関心がない。


このほか「執念の家譜」。これは三浦義村(大河では山本耕史)の子供である三浦光村の話です。最後まで生き残った三浦一族もついに滅びる。「裾野」は曽我兄弟と、十郎の恋人といわれた大磯の遊女於虎の話()。十郎がうそつき男です。

なかなかよかったです。
※ 「虎が雨」という季語もありますね。陰暦5月28日