早川書房★★★★
ようやく読了。これは16世紀、ヘンリー八世の側近として権勢を誇ったトマス・クロムウェルを主人公とした小説です。王の離婚問題だけでなく、修道院解体、叛乱の鎮圧、なんでもこなした人。「ウルフ・ホール」 「罪人を召し出せ」「鏡と光」の3部6巻。べらぼうな分厚さで、これをぜーんぶ積み上げたら20センチを超えるかも。よくまあ読みきった。
膨大な量ですが、しかし中身の進行具合はそれほどでもありません。1部ではアン・ブ ーリンが王の目にとまり、エリザベスを産み、2人目を流産するまで。そして2部では新顔のジェーン・シーモア登場。ブーリンはロンドン塔へ。審理。そして斬首。
その続き、締めくくりが今回の「鏡と光」です。初代王妃キャサリンの娘であるメアリの処遇。反チューダー派の貴族たちとの対決。やがて地味なジェーンは王妃となり、男児を出産して死亡。で、クロムウェルは次の王妃候補としてドイツあたりの諸公の娘であるアンを推挙します。これが命取りになった。
通説ではハンス・ホルバインの描いたアンの肖像(見合い写真ですね)が盛りすぎだった・・・ということになっていますが、実はホルバインの肖像はかなり写実的というのが定評らしい。はて、真相はどうだったのか。
「鏡と光」、いままでにも増して読みにくいです。気の効いた会話で進むんですが、いきなり中身が飛ぶ。ワープする。記憶のない名前がやたらいきなり出現する。このへんの時代背景、かなり知っていないと苦しいですね。知っていても大変。巻頭の人名リストと首っ引き。
イングランドはまだ小国です(※)。海の向こうのフランスと神聖ローマ帝国は強大で、両君主はお互いに牽制しあいながらもイングランドをとりこもうとする。北のスコットランドも南下を狙っている。そんな中でヘンリーとクロムウェルはローマ法王庁と決別したわけで、なかなかにややこしい。。カトリックとサヨナラすればそれで解決ならいいんですが、こんどはプロテスタントが動く。ルター派やらカルバン派やら、聖書刊行問題やら。やたら聖職者が処刑される
ちなみにクロムウェルの政敵はノーフォーク公トマス・ハワード。そして聖職者でもあるスティーブン・ガーディナー。この二人とはずーっと戦い続け、いがみあい、最終的に破れる。この連中とのケンカが意外に楽しいです。
とくにトマス・ハワードという頑固オヤジ。公爵ですから、たぶん王の血筋とかなり近いんでしょうね(※)。状況によっては、次の王としての継承権を主張するかもしれない立場でしょう。おまけにコチコチのカトリック。
そうそう。神聖ローマ帝国から派遣の大使もキャラになかなか味がある。英語がうまく発音できないので、ノーフォークを「ノルフェルク」と呼ぶ。そもそもクロムウェルだって、いろんな人から「クラム」とか「クロムル」とかだったか、けっこうメチャクチャ。こういう味付け部分が気が利いて凝っているのでなかなか大変です。本当はもっと時間をかけて、じっくり読むべき本でしょうね。もったいなかった。