朝日新聞出版★★★
ひょっとして新聞に連載だったのかな。少しずつ細切れで読むぶんには大きな問題なかったのかもしれない。
中村文則って、たしかスリの話を書いた作家ですよね。「掏摸」。あれは確かに良かった。で、この本もそうした職人+ハードボイルド+ノワールの系譜ですが、評価が難しい。
長編です。だいたい3分割が可能で、最初の3分の1はカード占いの男の孤独な生活。カード占いが本職なのか、詐欺師なのか、マジシャンなのか、判別が難しいですが、ま、ちょっと雰囲気のあるパートです。
で、次の3分の1はポーカーゲーム。違法賭博というか、ほとんど殺人ゲーム。強制的に全財産を賭けさせられて、死ぬか生きるかのカード勝負です。破滅すれば死ぬしかない。あるいは女だったら身を売るしかない。いやいや、男だって身を売る。
この部分は、ストーリーとは無関係になかなか迫力があります。あとで読むとかなり変な部分も多いんですが、ま、読んでる最中は面白い。
で、最後の3分の1。これはなんというか、シリメツレツ。広げすぎた大風呂敷の必死回収編。魔女狩り、魔方陣、タロット・・・無理やり後付け説明しようとして、悲惨な失敗ですね。ないほうがよかった。
トータルとして、失敗小説。でもなかなか面白かった。