新潮社★★★
奥泉光は「雪の階」を読んだことがあるだけ。二・二六直前の東京、青年士官たちの気分とか、チンケな華族の家の話とか、発生する怪しげな殺人事件。奇妙な魅力の理系お嬢さまとか、なかなかに面白い本でした。
で、今回は題材が将棋ですね。将棋神社で発見された矢文。結ばれた詰碁の図。ただし不詰めです。登場するのは奨励会、三段リーグ、実名の棋士たち。将棋記者。現実がいつのまにか魔界に変じ、数ページにわたって棋譜が展開。推理+ファンタジー+ミステリ+不可解。そんなに厚い本じゃないですが、かなり読みでがあります。
途中で女流棋士と北海道へ旅するシーンは「雪の階」でもあったな。たしかテキパキした(食欲旺盛な)若い女とぼんやりした記者だったか。今回もそうかな・・と思うと、違います。あんまり単純なストーリーラインじゃないです。作者の叙述を信用しちゃいけない。一転、二転、三転また四殿。
デングリガエシの結末に、えー? と読み直ししようかと思って、やはり止めました。なんかアヤフヤなままでもいい。読後感は悪くなかったです。ただこの作家の本、図書館にはあんまり置いてないんだなあ。