「新選組 幕末の青嵐」木内昇

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bakumatunoseiran.jpgアスコム★★★

櫛挽道守」の作家です。新選組エピソードを順に追いながら、それぞれを一人称で展開。多摩から函館まで。視点パーソンは20人近くなるかな、

たしか最初は不器用に生きる薬売りの土方歳三で、やりたいことが見つからずひたすらモヤモヤしている。次は日野の佐藤彦五郎。歳三の義理の兄ですね。そして沖田総司。剣にしか興味のもてない不思議少年。そして道場の若き跡継ぎであるさわやかな近藤勇。

こうした馴染みの名前だけでなく、清川八郎とか鵜殿鳩翁なんて視点まで登場する。鵜殿ってのは、浪士隊を京までひきつれた責任者です。着くや否やひどいことになって可哀相に()。

もちろん原田左之助とか永倉新八、藤堂平助などなどズラズラと登場します。だいたい司馬さんあたりが書いた人物イメージそのままですね。それぞれの観点や立場からいろいろ事件を説明していくわけで、とりわけ新しくはないけど安心感はあります。なかなか面白いです。

そうそう。ちょっと異色だったのは伊東甲子太郎かな。あんまりこの人について書いた小説ってないような気がします。たぶん書くのが難しい。ただここでは決して完璧に芝居ができたわけではなく、自分を否定されそうになると、ついムキになって地が出る人物。人間味がありました。

山南敬助もいい人だけど、うーん・・・という性格。斎藤一が暗くて依怙地であんがい面白いです。そうそう、落ち着きはらって見える山岡鉄太郎(鉄舟)も実は浪士組の引率ストレスで胃が痛かったとか。

これが処女作だそうですが、達者な人なんですね。楽しめる一冊でした。

 

)前任者(松平上総介)の辞退で鵜殿がいきなり浪士組引率を命じられたのが55歳。もうトシです。京までは馬だったのか徒歩だったのか。浪士組分裂の責任とって辞職。亡くなったのは62歳だそうです。(Wikiより)