河出書房新社★★★
「杉浦日向子 増補新版」と同じで、文藝別冊のムック本。中身は「夏目漱石」です。ちなみに作家の奥泉光という人は、かなり重度の漱石オタクで、このムックにはパスティーシュ「『吾輩は猫である』殺人事件」の一部も掲載されています。
うーん、という程度しか説明できないですね。
巻頭が奥泉光、斎藤美奈子、高橋源一郎の鼎談。みんな勝手なことしゃべって面白いです。
そうそう。水村美苗という人が、違いすぎる漱石と谷崎を比べていろいろ書いてるのも悪くない。あの特定の時代に漱石があらわれ、この時代にはたまたま谷崎だった。もし逆だったらどうなったことやら。両人にも不幸、読者にも日本にとっても大不幸。
定番といわれる作品の一部だけを抜粋一覧した企画もよかったです。あまり読んでない人への手ほどき。そうでもないと、まったくイメージのわかない小説も多い。
・・・という具合にずーっと最後まで読んで、結局のところ自分は前期三部作では「三四郎」だけ、後期三部作からは「心」しか読んでいないけど、でもこれで十分だったという気がします。
要するに漱石を軽んじるのはナンだけど、かといってあんまり崇めすぎるのもナニ。「草枕」の理屈展開と描写にワケわからなくなったり「虞美人草」の藤尾の結末で困惑したのは当然だったんだな、と一安心した次第です。
はい。やはり漱石は猫と三四郎だけでもいいんだ。けっして悪くない洗濯 選択。