2022年に読んだ本

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読んだ本はたった39冊か。平均すると10日に1冊。これじゃ「本が好きです」なんて言えないですね。したがって中身も不作で★★★★が2冊しかないです。
 
「炎環」永井路子

nagaimichiko.jpg鎌倉時代のこと、何も知らないことに気がついて、おそまきながら安易に永井路子。

読後にも書いていますが、これで少年時代に読んだ岡本綺堂の「修善寺物語」の背景がわかりました。なぜ頼家が伊豆に蟄居していたのか。そういう経緯だったのか。

常盤御前が雪の中、3人連れていた子の長男今若が阿野全成。これが鎌倉に馳せ参じたのか。知らんかった。まん中の乙若が範頼になったことも、なるほど!でした。たしか絵本では常盤に手を引かれていた小さいほうの子です。牛若はまだ懐の中。知識と知識が合理的にリンクしていないんですね。。

ちなみに通常の義経本では、範頼ってのは存在感のない無能武将で、いつのまにか消えます。子供たちにとっては梶原景時とならんで好かれないキャラです。
 
「鏡と光」ヒラリー・マンテル

kagamitohikari.jpgのサムネール画像ヒラリー・マンテル作、★★★★です。トマス・クロムウェルを主人公にしたシリーズの3冊目。トマス・クロムウェルというのは護国卿オリバー・クロムウェルの2~3代前で、ヘンリー八世の寵臣です。卑賤の身から這い上がり権勢を誇ったけど、不細工な王妃を世話したんで首を切られたという定説になっています。友人の画家のせい。

ま、そうした俗説はともかく。このクロムウェル3部作はいいですよ。大部、壮大。この頃の英国史に興味があるんならオススメです。登場人物にみんな血が通っています。類型的な悪人や善人はいません。ただし度し難いアホや脳タリンはいくらでもいます。多少の知識がないと前後が混乱するかもしれません。
 
「櫛挽道守」木内昇
 
kushibikimichi.jpgなにも知識なく読んだ本ですが、意外に読後感が良かった。その後、この作家のものは何冊か読みましたが、妙に気分を残す書き手です。

中山道薮原宿。「お六櫛」という超細かい櫛作りを生業にしている貧乏職人の話です。「夜明け前」の明るさをなくして、思い切って田舎臭く貧しくしたような本です。

で、年頃になっても嫁にもいかず、ひたすら櫛を作っている娘のところに隣の宿のいい男が婿に入って・・・というストーリー。ただ、あんまりストーリーに意味はないと思います。
 
「夢熊野」紀和鏡

yumekumano2.jpg源平時代の熊野。大昔には争っていた熊野三山が協力して「熊野繁栄!」の共通目標をかかげ、上皇や平氏との微妙な関係を模索展開する。中心にいるのは源為義の娘。怪しい丹鶴伝説のモトとなった女性です。

ファンタジーみたいな外見ですが、中身はけっこうハードと思います。なぜか味があって、たぶん4回目の読了でした。
 
「犬が星見た-ロシア旅行」武田百合子
 
inugahoshimita.jpg部分的には読んだ記憶もあったんですが、まともに読み切ったのは今回が初めてです。★★★評価。

武田百合子が亭主の泰淳、泰淳の友人で中国文学の竹内好といっしょにロシア旅行。1969年ですからブレジネフの時代ですね。さすがに簡単に逮捕はされないだろうけど、だからといって安心もできない。異国の乾いた空気を百合子が独自の感覚でとらえています。この人、ほんと独特です。

なんか自分自身、開放直後あたりの中国(香港から広東)へ行ったときの気分を思い出しました。農民はまだ貧しそうだったけど、みんな必死に上を向いている。ただし役人、警官は怖い。無事に出国できたときは、正直ホッとしました。帰りの飛行機、ガバガバ飲んでしまった。
 
「騎士団長殺し」村上春樹

kishidanchou12.jpgたまたま見かけたので読んだけど、たぶん駄作です。ま、春樹ファンならまったく文句は言わないと思うけど。

読後感想でも書きましたが、独身暮らしの主人公が広い家でご飯をつくって、ブリの粕漬け、漬物、胡瓜とワカメの酢の物、大根と油揚げの味噌汁。これは驚きました。

パスタでもサンドイッチでもない。ハルキで和食ってのは非常に珍しいです。びっくり。その借家に米の買い置きや漬物や炊飯器があったとは。