「漢字検定のアホらしさ」高島俊男

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連合出版★★★

okotoba-b3.jpg「お言葉ですが...」の別巻3です。もちろん前にも読んでいました。

ただ、間違って借り出したくらいなんで、中身は何も覚えていません。トクです。何回でも楽しめる。

タイトルにも使われている「漢字検定」については、もうクソミソですね。検定の問題作成者はたぶん何も知らないバイト君で、せっせと辞書かなんか引いて訳のわからない出題をしている。

たとえば「船頭さんは蓑笠を付けていた」という文にフリガナをつける。「ミノカサ」ならま、いいでしょう。でもこれを「音」で書けという。正解は「サリュウ」だそうです。ハッ。

高島さんは何回も書いてるけど、そもそも日本政府の歴代の大方針は「漢字の廃止」です。こんなもんがあるから脱亜の一等国になれない。何回も何回も改革をやろうとしては失敗。で、敗戦を好機に今度こそ・・・とまた始めて、でも急にゼロにはできないので、とりあえず最小限の使用基準として「当用漢字」を決めた。ところが周囲からは猛反対で、結果グズグズ・・・で現在に至る。

だから国語審議会の答申がいつもヘンテコリンなのは仕方ないんですね。国家の方針国民の気持ち新聞の都合、みーんなズレている。

ということとは別に、読み直して面白かったのは「春望」です。杜甫の国破れて山河あり・・ですね。ほとんどの日本人は勝手な日本人ふうの解釈しかしていない。どこかの城跡で石垣のコケを眺めて灌漑にふける

国とは何か。「愛する日本国が・・」の国ではなく、朝廷、政治機構のことだそうです。つまりは王室。長安が破壊されたわけではないし、たぶん町並みはあまり変わっていない。壊れたのは権威、システムそのものです。同じように「城春にして・・」の城は「お城」じゃないです。城壁の中。つまりは長安の街ことだとか。

だいたい高島さんは漢文に返り点なんかつけて重々しく(あるいは感傷的に)読むのを嫌っています。そもそも「漢文」とはなんだ。中国語と言ってほしい。せいぜいでも「中国文」です。イギリスなら英語、英文。日本なら日本語、日本文。英文に(1) (2) (3)とか返り点をつけて、日本語で読んだりするか。

つまりは I1 love3 you2 と書いて「おれあんたが好きだ」と読みくだす()。日本の漢文に対する態度はコレですね。できれば「アイ ラブ ユー」と読んでほしい。

 

これをやったのがたぶん5世紀前後、古墳時代の日本の知識階級です。どうせなら中国語ではなく英語かなんかならよかったのに。中国語にくらべれば英語のほうがまだしも和語と相性がよかったはずだそうです。つまり水と油。べらぼうに難易度の高い「文字」の輸入をなしとげた。

少し違った。「我 汝を愛す」と読みくだし、意味は「おれあんたが好きだ」と解説する。