新潮社★★★★
「雲上雲下」で数年前のテレビドラマ(眩~北斎の娘~ 宮﨑あおい演)を思い出し、それで原作を読んでみようという気になりました。
なかなかの良作です。数年前に読んだキャサリン・ゴヴィエという作家の「北斎と応為」もなかなか良かったんですが、さすがは本場ニッポンの一流作家。江戸弁やら江戸っ子気風がいい味を出しています。まるで落語か講談か。少しテンポが良すぎて、町人たち、ほんとにこんなふうに話していたんですかね。
徹底的に調べたことがうかがえます。顔料の作り方とか絵の構図とか書き方とか、たいへんだ・・。
いろいろ面白かったんですが、作中登場する困った甥ッ子の話、そんな資料が残っていたのか。事実だったんでしょうか。不良甥っ子が次々と借金をつくり、それもあって北斎は必死に描きまくった。稼いでも稼いでも埋まらない。
ただそれは別としても、当時の絵描き、あんまり金には縁がなかったようです。たぶん版元だけが儲けた。ただしその版元も、火事とか不景気とか御政道の按配とか、決して安定とはいえない。そういう時代です。