朝日新聞出版★★★
吉田修一は「悪人」の作家です。他にもいろいろあるはずだげど、意外に読んでない。あっ「怒り」もあった。かなり読める作家です。
でこの「国宝」、新聞連載だそうですが、何ですかね、伝記小説ですか。大河ドラマ。芸談。成長小説。長崎のヤクザの息子がいろいろあって歌舞伎役者になる。持ってうまれた素質と才能で稀代の名女形。そして、いろいろあって、最後は人間国宝に。
なんで歌舞伎なのかなあ・・と不審でしたが、要するに吉田修一、歌舞伎が好きになったんですね。
いろいろ経緯の末に四代目鴈治郎に紹介してもらった。鴈治郎がどんな人か知りませんが、話の成り行きで「黒衣つくってやろうか」ということになった。役者の陰で仕事している黒衣のサポート要員「くろこ」です。
で、本当に採寸して黒子の衣装をつくってもらって、それからは大手をふって見物できるようになった。舞台の裏でも、楽屋でもそうだし、裸の役者のそばでもアグラかいて話を聞ける。何をしてもあんまり周囲の関心をひきません。実に面白い経験をした。
そういう経緯でこの長い小説が誕生したようです。有名な演目の紹介もあるし、それこそ楽屋裏の説明もある。ちょっと趣向をこらした語りで進みますが、ま、なかなかの読後感です。