柏書房★★
かなり真面目な本。真面目というのも変ですが、要するに一般大衆向けではない。もちろん専門家向けでもないので、ちょうど真ん中ですか。
歴史家たちが古文書をどう扱っているのか。実例をあげてそのサワリの部分を紹介しています。どうせ紹介するんなら、みんなが多少の知識を持っている豊臣政権がいい。たとえば五大老とか五奉行とか。彼らがどんな書状を出しているのか。それによって「五大老」という制度が本当に存在したのかどうかがわかる(ほとんど実態はなかったらしい)。
何十、何百という書状を綿密に調べる。どんな紙を使っているかも大事です。本物なのか控えなのか。書き写しなのか。いつ書かれたものなのか。書かれた人物たちの肩書によっても、時代が特定できます。前田玄似なのか徳善院なのか、民部卿なのか。面倒な作業なんだなあ。
また「てんか」がミカンを「いわ」に贈った書状。天下なのか殿下なのか。また「いわ」は北政所の侍女だそうで、ようするに奥さんの名前は書かない。で、その書状には「まところ」「五もし」「きん五」「おひめ」に分けろと書いてある。これは誰のことか。
「まところ」は北政所。「きん五」は金吾、つまり後の小早川秀秋。「五もし」は御寮人だろうから少し難しいですが、たぶん豪姫。そして「おひめ」は織田信雄の娘で養女となっていた「小姫」と考えられるそうで、なかなか。
そうそう。下世話なことですが、明との和平交渉で「国王にしてやるぞ」と言われた秀吉が真っ赤になって怒った・・は嘘だそうです。たぶん喜んだ。この手の面白い話は、たいてい後世の有名ジャーナリスト(頼山陽とか徳富蘇峰とか)がこしられたデマです。