角川書店★★★
貴志祐介は「新世界より」「悪の教典」の作家。秋雨物語じゃ、どうしても雨月物語を連想する。ま、それを狙ったんだと思います。
中編が4つ。餓鬼の田 / フーグ / 白鳥の歌 / こっくりさん。餓鬼は「子供」ではなく、仏教でいういつも飢えた鬼です。フーグは「解離性遁走」。白鳥の歌は最後に歌う絶唱ですね。こっくりさんは裏バージョンのこっくりさん召還。
みんな怖~い話です。ホラーというのかな。登場する主人公(?)はみんな美しくない。汚れていて、汚い。
たとえば二作目の小説家は遅筆でデブで(たぶん)性格が悪くてガンコで臆病で、無残に死ぬ。編集者からは「だいたい小説家なんて連中は・・・」とクソミソに罵られています。でも若い女性に好かれていたりする。意外性。
ま、面白い本でした。そうそう。貴志センセイ、「新世界より」で日本SF大賞、「悪の教典」では山田風太郎賞だそうです。多彩、多才。
実はこのところ、「新世界より」を読み直してみようかという気になっています。人類絶滅とボノボ文化とエスパーを合体させたような長編ですね。少年雑誌ふうSFが嫌いでなかったらオススメ。