「自由思考」中村文則

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jiyuushikou.jpg河出書房新★★★

中村文則は「」とか「掏摸」「カード師」とか。たぶんまだ40代くらいかな。芥川賞作家です。難しい言葉は使わない・・とかどこかで書いていますが、たしかにそう。平易な言葉を使って、平易に書いている。たいていは読みやすいです。

で、そのエッセー集。2002年から2019年までだそうです。もっと早めにまとめたかったけど、つい、こうなってしまった。

自称、暗い男。うん、納得。太宰とドストエフスキーにズッポリはまってしまった。なるほど。学生時代、「太陽が似合わない男第一位」に選ばれたそうです。ついでに「自転車に乗れなさそうな男第一位」にもなった。少年時代、ダンゴ虫になりたかった。暗くて湿気だらけの落ち葉の下を這いまわる。危険がせまったらグルッと丸まってやりすごす()。

本は三章に分かれていて、まんなかの第二章は政治や社会へのかなりストレートな感想、批判です。いわゆる「作家」の(凝った、曲折した)文体ではありません。素直。まともにモリカケを批判している。一部の阿諛・忖度メディアを弾劾している。恥ずかしくないのだろうか・・と不思議がる。趣旨はスッキリしていて、読後感はさわやかです。

そうそう。たぶん可愛い系「いい男」の部類と思いますが本人は頬のぷっくりと目の下の隈が気になるらしく、小顔ローラーをすすめられてひそかに使ってみたら効果抜群だったそうです。ま、そういう人。

そんなダンゴ虫なのに、あるとき鳥が飛来してきて、しっかり丸まって防御しているのを、まったく意に介さずペロッと飲み込んだ。ショックですよね。人生観が変わります。