「超新星起源」劉慈欣

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chosinseikigen.jpg早川書房★★

劉慈欣は最近評判(らしい)長編SF「三体」の作者です。名前、どう読むのかは知りません()。「三体」には多少興味があるものの、なんせ人気なんで、図書館ではなかなか並んでいない。といって予約かけるほどには関心がないし・・。

その劉慈欣のデビュー作がこれ。人気作家になったので、旧作に翻訳がかかったんでしょうね。訳は定番(?)、大森望です。

えーと、超新星が大爆発します。地球から数光年、ごくご近所の星です。そんな兆候があるんなら地球の科学者はずーっと前から予知していそうなもんですが、なぜか思いいたらなかった。

そういうことより、結果が大問題ですね。至近なので当然ながらナントカ光線が束になってグワーッと地球を覆います。で、そのナントカ光線はビルの壁を通し、深い洞窟も貫き。数時間にわたって地球に降り注ぐ。すべての生物が即座に死亡というわけではないですが、放射を受けた人間の体細胞は回復不能の損傷を受け、あと1年も生き続けられなくなる。

ところがドッコイ。12歳以下の若い細胞だけはその損傷を修復できるらしい。つまり人類の13歳以上はあと1年ですべていなくなる。残るのは12歳以下の少年少女、幼児だけ。

さて、どうなるか。これがテーマですね。

多くの国の政府は少年少女たちの短期育成にとりかかる。自分たちのやってきた「社会」「仕事」「インフラ」をなんとか引き継いでもらおうとする。もちろんスムーズになんてできないだろうけど、でも最低限最小限の継続はできるんじゃないか。文明は100年か200年の逆戻り。それとも1000年の退行か。それでもいいから生き延びてほしい。これが遺言だ・・・。

ま、そういう設定での小説です。で、最初のうちはおおかたの想像通り進行しますが、途中から不思議な方向へ曲がっていきます。「子供」は何をしたがるのか。どんな社会を欲するのか。あらら、あらら、というヘンテコリンな「理想社会」。子供は仕事をしたいのか。勉強をしたいのか。義務を果たしたいのか。遊びたいのか。アイスクリームを食べたいのか。少なくともまだ「恋」はない。

子供たちだけの中国、アメリカ、英国、ロシア、日本()。世界の「子供指導者」たちが子供国連に集まって何するんでしょう。もちろん集まるためには事前に「子供パイロット」が必要だし「子供整備士」「子供タンクローリー運転手」も必須。万一にそなえて「子供軍」も必要かな。「子供官僚」もいないとまずい。

ほんと、考えるだに大変です。だから途中で多少は省略。作中でも言及されていますがゴールディングの「蠅の王」を少し連想しますね。子供たちの王国で子供たちは何をしようとするか。この小説、もろもろ成功したとはいえませんが、作者は思い切って想像の羽を伸ばしてはみた。で、展開された未来国家の姿は・・・・。

ま、そういうことでした。たぶん感動はしません。少し呆れます。

劉慈欣=りゅうじきん、リウ・ジシン、リウツーシン。いろいろ。

若いころの中国人作家が日本にどういうイメージを持っていたか、けっこう面白いです。ちなみに日本の子供首相は日本刀が好きなようです。